
少子高齢化や働き方改革が求められる昨今、業務効率化はどの業種にも求められる課題となっています。
工事現場では業務効率化と安全最優先を両方求められます。
皆さんの中にも、「安全を優先するのか、効率化するのかどっちなんだ!」「両方なんて無理に決まっている!」なんて思った方もいるのではないでしょうか?
また、上司からは生産性向上や時間外削減が求められるけども、具体的な進め方についての指示がなく悩んでないでしょうか?
・業務効率化の手法を知りたい方
・トヨタ式カイゼンについて知りたい方
私の職場ではトヨタ式カイゼンを取り入れ、全ての業務についてカイゼンを行っています。
私も初めは「安全最優先≠業務効率向上」だと考えていました。
実際にトヨタ式カイゼンを取り入れると、考えが「安全最優先=業務効率向上」であると理解できました。
この記事では私が習得した業務効率化の進め方や手法を図を使って分かりやすく説明します。
併せて、業務カイゼンで役立つおすすめスキルも紹介しますので、是非最後までご覧ください。
目次
業務効率化とは?
業務効率化とは様々な業務プロセスに隠れた「ムダ」を無くしプロセスをカイゼンすることで、生産性向上を図ることができます。
ムダを無くしプロセスを効率化することで、同じ従業員数でも労働時間数を減らしたり、同じ労働時間でも質の高い成果を上げることが可能です。
少子高齢化による労働人口減少に伴う対策や、働き方改革が求められる今、業務効率化の必要性が高まっています。

カイゼンとは?
「カイゼン」とは「改善」と同じ意味ですが、主に製造業の生産現場で行われる改善としてカタカナ表記で「カイゼン」と表します。
意味としては、改善と同じく悪いものを改めて良くしていくということです。
しかし、カタカナ表記になると、主に製造業や生産現場で行われている作業の見直しの意味を指します。
さらに、「カイゼン」は、ボトムアップで問題解決を計っていくという意味合いも含まれているのが特徴的です。
経営陣に指示されて動くのではなく、現場の作業者が皆で知恵を出し合い、作業効率の向上や、安全性の確保など状況の改善を見直してゆくのです。
海外でも「kaizen」と言う名前で広く普及されています。
最も有名なのが、トヨタ自動車の「トヨタ式カイゼン」で、「トヨタ生産方式」の主要な考え方のひとつとして挙げられます。

トヨタ式カイゼンとは?
「カイゼン」という言葉が海外でもよく知られているのは、トヨタがきっかけだといわれています。
日本を代表する自動車メーカーであるトヨタは、カイゼンの考え方や哲学をいち早く取り入れて成功させた先駆者といえる存在です。
トヨタ自動車が掲げる「トヨタ生産方式」は、自動車を組み立てる時、必要な部品を、必要な時に必要なだけ到着させ、在庫を限りなくゼロにする無駄を徹底的に省く考え方が根本にあります。
全員参加で全ての人が当事者意識を持ち無駄を見つけ、それを解消していくのです。
そうした考え方の中にトヨタ式カイゼンもあり、ひとつのサイクルとして機能します。

トヨタ式カイゼンから学ぶ4ステップと13の手法
トヨタ式カイゼンは自動車製造において活用された手法ですが、ムダを見つけてカイゼンをするということ自体は製造業に関係なくどの産業にも当てはまります。
今行っている業務を整理し、あるべき姿とのギャップを見つけてカイゼンすることは産業や事務に関係なく適用できますので参考にしてください。
カイゼンサイクル図
カイゼンは「表準」⇒「問題点・ムダの顕在化」⇒「カイゼン策検討」⇒「標準」のサイクルで行います。
「表準」と「あるべき姿」にギャップがある場合はカイゼンの余地があるということです。
ムダを見つけ出し、カイゼンをしましょう。

ステップ①_表準(おもてひょうじゅん)
手法①_業務量マップ
業務カイゼンを行う準備として、業務の見える化を行います。
業務を新しい進め方で実施・定着させ、その成果を埋もれさせない。そのために、成果をしっかりと業務量マップに反映させることが大切です。
・グループ、チームがそれぞれどんな業務を行っているのかを整理
・どの業務にどの程度の時間を掛けているのかを定量的に把握
・ボリュームゾーンからカイゼンを推進していくことで、早期に成果を生み出す

手法②_表準作成
整理した業務について、ありのままの状態を表に見えるようにします。
「時間は動作の影」であり、時間測定を行うことでどの部分に時間が掛かっているのかを定量的に把握することが重要です。
・業務を行う上での動作も出来るだけ細かく時間測定する
・ムダが潜んでいそうな工程を抽出したら、より細分化してどこに時間が掛かっているのかを抽出する
・特に「しゃがむ」「持ち替える」「振り返る」といった動作がある場合は細かく記録する(付加価値のない動作を抽出)
表準の作成には時間と手間がかかります。
「正直めんどくさい」「そんなことしている暇はない」と思う人もいると思います。
現状の業務はムダが見えずに、見つけられない状態です。
慣れるまでは余計時間が掛かりますが、まずはムダを見つけられる状況を作らなければ何もできません。
カイゼンを進めれば時間が生まれます。まずはやってみましょう。

ステップ②_問題点・ムダの顕在化
手法③_あるべき姿を考える
業務カイゼンを行う前に、その業務の「あるべき姿」を整理しましょう。
「あるべき姿」を整理することで効果的なカイゼンができます。
・あるべき姿を基に、一旦現状を否定して考える
・その業務の目的はなにか、目的を達成するためにその動作は必要か、なぜその動作をやらなければいけないのか考える
・あるべき姿を整理することで、カイゼンの視点が変わってくる
在庫管理業務を例にすると、本来は工場やお客様に商品を届けるのが目的であり、在庫管理が目的ではありません。
もし直接商品を届けられれば、倉庫も在庫管理も不要になります。
ではなぜ在庫管理が必要なのか、在庫を確保しなければいけない理由はなにか、倉庫を保有してまで大量の在庫を管理する理由はなにかという風にあるべき姿と現状のギャップを意識して考えてみましょう。

手法④_行動の付加価値を意識
業務で行う行動に対して付加価値があるのか意識して考えましょう。
付加価値のない「動き」をなくし、付加価値を生む「働き」を行う。
・付加価値のない作業は「動き」であり、付加価値のある作業は「働き」
・今の条件(環境や手順)ではやらなければいけない「動き」はムダであり、カイゼンする対象
・待ち時間など動いていない行動はムダであり直ぐに省かなければいけない
・その行動が付加価値を生んでいるか、お客様や後工程のためになっているのか考える

手法⑤_7つのムダ
業務が忙しいふりをして、仕事した気になっていませんか?
いくら忙しくても、ムダなことをしていては仕事をしていないのと一緒です。
7つのムダに該当する行動を行っていないか考えてみましょう。

手法⑥_ムダの見つけ方
3つの「みる」でムダを見つけましょう。
よく「みる」ことで、根本的な問題点が発見でき、効果的なカイゼンに繋がります。
・まずは、現地・現物をよく知るために「見る」
・作業順序、作業時間をよく「観る」ことで問題点を見つける
・はっきりとした判断基準で愚直なまでに、地道に、徹底的に、正常・異常を「看る」

ステップ③_カイゼン策検討
手法⑦_なぜなぜ真因追究
なぜ、そのムダ・不良が発生したのかを考えましょう。
なぜなぜを5回繰り返し、真の原因を追究しましょう。
・「なぜなぜ」を5回繰り返し問題の真因追究を行い、根本的な対策を検討する
・経験や想定で原因を決めつけずに、なぜなぜを5回必ず繰り返す
・「この業務の目的はなにか」「目的に合っているのか」を常に問う
ムダは、全て人間がやっていること。
だから、ムダを無くすことは簡単。
いかに早くムダに気づくかがカイゼンのカギ。

手法⑧_NHKの視点
その業務や行動が本当に必要かを考え、NHK(なくす、へらす、かえる)の視点からカイゼン案を検討しましょう。
・業務の目的は何か、目的に合っているかを考える
・まずはその業務がなくせないか、なくせない理由はなにか整理する
・なくせない場合はへらせないか、へらせない理由はなにか整理する
・へらせない場合はかえれないか、かえれない理由を整理する

手法⑨_一人作業
業務は基本的に一人で行うことを前提として考えましょう。
「みんなで確認しながらの方がいいから」とか「チームだから」というなんとなく複数人で業務をしていませんか?
複数人での業務にはムダが多くあります。まずは一人で出来るようにルールや手順の見直しを行いましょう。
・その業務が本当に複数人いなければ成立しないのか考える
・手順を見直したりツールを活用することで一人作業化できないか考える

手法⑩_平準化
業務量が月や週でバラツキがあると、そこにはムダがあります。
業務量を一定のボリュームに調整することで、ムダに人手を確保しておく必要がなくなります。
平準化は一定ペースで業務を行えるので、残業削減にも効果的です。
・業務量が年・月・週・日でどれくらいばらつきがあるのかを整理する
・なぜその時に業務を行わなければいけないのか、前倒しや先送りできないか考える

手法⑪_タクトタイム
タクトタイムは1件の業務をどれだけの時間で実施するべきなのかという時間です。
過剰な業務はその後の待ち時間などのムダを生みます。
必要なものを、必要なスピードで、必要なだけ行うことがムダを無くすことになります。
・1日あたり、必要な生産数(業務量)はいくつなのか整理する
・1日の稼働時間を整理する
・タクトタイムを算出し、ムダに業務をしないようにする
運搬作業を例にすると、一日に必要な荷物運搬は40個の場合、タクトタイムは12分/個になります。
現状より短い時間の場合、運搬方法や業務の必要性についてカイゼンする必要があります。
現状より長い時間の場合、過剰に運搬していることになり、ムダに倉庫を使ったり、運搬業務に待ち時間が発生したりします。
タクトタイムより多くても少なくてもムダが発生します。
ジャストタイムで業務を行うことがムダ削減に繋がります。

手法⑫_自工程完結
自工程完結は、自分の工程での仕事は自分で品質を保証するという考え方です。
各工程で制作し、組み合わせ後に品質検査を行う流れの場合、不良が発生すると全ての工程がやり直しとなります。
また、どの工程が不良になったのかを調べるムダが発生します。
それぞれの工程で制作したものはそれぞれ品質検査を行うことで、不良が直ぐにわかりムダな出戻りが発生しません。
・それぞれの工程での責任範囲を明確にする
・担当する責任範囲で、どのように品質保証するのかを明確化(検査方法等)する
・最後の検査を無くし、各プロセスのみで品質が保証する
各プロセスで品質保証が出来れば、完成品を検査する必要がなくなります。
品質が検査ではなくプロセスで成立する仕組みを作りましょう。

ステップ④_標準
手法⑬_標準化・教育
ステップ①~③で行ったカイゼンは標準化しましょう。
いくら業務カイゼンを実施しても、標準化と教育ができないとその場限りになってしまい、本来のカイゼン効果が発揮されません。
新しい進め方を定着させ、次のカイゼンに進める仕組みづくりを行いましょう。
・標準手順を整理し、誰でも同じことができるようにする
・標準手順で教育を行い、新しい進め方を定着させる
カイゼンに終わりはありません。
標準化したものは、次の表準になります。あるべき姿とのギャップを埋めるために次のムダを見つけてカイゼンを行いましょう。
ムダの排除・付加価値の無い作業を減らし、業務の比率を高め続けましょう。

まとめ
業務カイゼンを行うことは、業務効率化だけでなく品質・安全・生産性向上に繋がります。
品質や安全性が低下するものはカイゼンではありません。
ただ無くせばいい、ただ減らせばいいというものではなく、本質を理解しあるべき姿に近づけることが重要です。
カイゼンは「品質」「安全性」「生産性」の三方よしが原則です。
カイゼンをする前には全て向上しているか振り返ることを心掛けましょう。
事務職の業務カイゼン事例について⇩こちらの記事で紹介していますのであわせてご覧ください。
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