ALPS処理水の海洋放出は安全なのか?影響や風評被害について徹底解説

廃炉の軌跡

福島第一原発の廃炉作業に伴って発生するALPS処理水の処分方法について、政府は2023年4月に海洋放出を決定しました。

しかし、この決定には賛否両論があり、国内外から様々な反応が寄せられています。

ALPS処理水とは何か、海洋放出の安全性や影響はどうなのか、風評被害や賠償はどう対応するのかなど、気になる点を整理してみました。

ALPS処理水の処分(METI/経済産業省) (METI/経済産業省)

ALPS処理水とは

ALPS処理水とは、福島第一原発で発生する汚染水から多核種除去設備(ALPS)などを使ってトリチウム以外の放射性物質を規制基準以下まで取り除いたものです。

トリチウムは水素の仲間で、自然界にも存在する水素の同位体です。トリチウムが含まれる水はトリチウム水と呼ばれ、原子力施設や研究機関などで使用されています。

ALPS処理水は、汚染水とは異なり、安全性の面で大きく差があります。

汚染水にはストロンチウムやセシウムなどの放射性物質が高濃度で含まれており、人体や環境に重大な影響を与える可能性があります。

しかし、ALPS処理水にはトリチウム以外の放射性物質がほとんど除去されており、トリチウムも発生する放射線のエネルギーが非常に弱く、環境や人体への影響はほとんどありません。

ALPS処理水の処分 | 東京電力 (tepco.co.jp)

海洋放出の安全性と影響

政府は、ALPS処理水の処分方法として海洋放出を選択しました。

海洋放出とは、ALPS処理水をさらに再浄化してトリチウム以外の放射性物質を規制基準以下にした上で、海水で希釈して海に流すことです。

海洋放出は、国内でも実績があり、かつ放出設備の取扱いやモニタリングが比較的容易な方法であるとされています。

海洋放出の安全性については、国際原子力機関(IAEA)の専門家のレビューを受けています。

IAEAは2023年4月に報告書を公表し、以下のように評価しています。

  • ALPS処理水に含まれるトリチウム以外の放射性物質は国際基準を満たすレベルで除去されており、海洋放出後も人や環境への影響は極めて小さい。
  • トリチウムについても海洋放出後の濃度は国際基準を大幅に下回るレベルであり、人や環境への影響は極めて小さい。
  • 海洋放出に伴う海域モニタリングの計画は適切であり、放射能測定の信頼性も高い。
ALPS処理水の処分(METI/経済産業省) (METI/経済産業省)

海洋放出の影響については、以下のような点が考えられます。

  • 海水や水産物の放射能濃度は規制基準を大幅に下回るレベルであり、食品安全や健康への影響はほとんどない。
  • 海洋生態系や海洋環境への影響も極めて小さく、生物多様性や生態系サービスに悪影響を及ぼすことはない。
  • 海洋放出による放射能拡散は限定的であり、周辺国や地域への影響も極めて小さい。
ALPS処理水って何?本当に安全なの?|ALPS処理水(METI/経済産業省)

風評被害と賠償

海洋放出の安全性や影響が科学的に確認されているとしても、風評被害や不安感が生じる可能性は否定できません。

特に、福島県やその周辺地域の農林水産業や観光業などは、東日本大震災や原発事故の後も風評被害に苦しんできました。

政府や東京電力は、このような風評被害に対してどのように対応するのでしょうか。

政府は、ALPS処理水の処分に伴って生じうる風評被害に対応する責務を果たすため、以下のような対策を講じるとしています。

  • 国民・国際社会の理解の醸成:ALPS処理水の処分に関する正確かつ分かりやすい情報を継続的に発信し、安全性や影響に関する誤解や不安を払拭する。
  • 生産・加工・流通・消費対策:風評被害を受け得るさまざまな産業の生産・加工・流通・消費を支援するため、販路開拓やブランド化などの施策を実施する。
  • 適切な賠償:これらの対策を最大限に講じた上でもなお、ALPS処理水の放出に伴う風評被害が生じた場合には、迅速かつ適切に賠償を行う。

東京電力も、政府と連携しながら、以下のような対策を実施するとしています。

  • モニタリングの拡充・強化:海域モニタリングをより拡充・強化し、測定結果を随時公開する。農林水産業者や専門家の協力を仰ぎ、客観性・透明性を確保する。
  • 情報発信と風評抑制:人や環境への影響に関する情報等を正確かつ継続的に発信し、風評被害を最大限抑制するための生産・加工・流通・消費対策に全力で取り組む。
  • 適切な賠償:これらの対策を最大限に講じた上でもなお、ALPS処理水の放出に伴う風評被害が生じた場合には、迅速かつ適切に賠償を行う。

まとめ

ALPS処理水の処分は、福島第一原発の廃炉と福島の復興のために必要なことです。

政府や東京電力は、海洋放出の安全性や影響を科学的に確認し、IAEAの専門家のレビューも受けています。

また、風評被害に対しても、情報発信や支援策、賠償などの対策を講じるとしています。

しかし、これらの対策だけでは、風評被害や不安感を完全に解消することはできません。

私たち一人一人が、ALPS処理水に関する正しい知識を持ち、冷静な判断をすることが大切です。

また、福島の農林水産業や観光業などを応援することも重要です。

ALPS処理水の処分は、私たち全員が関わる問題です。みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと。

参考リンク

ALPS処理水の処分(METI/経済産業省) : ALPS処理水の処分 | 東京電力 : ALPS処理水の処分に関するIAEAレビュー報告書(和訳)

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