福島第一原発の廃炉作業、最大の難関「燃料デブリ」の取り出しはいつ始まるのか?

廃炉の軌跡

東京電力福島第一原子力発電所の事故から12年が経ちました。廃炉作業は、最大の難関とされる「燃料デブリ」の取り出しに向け、重要な局面を迎えています。

「燃料デブリ」とは、事故で溶け落ちた核燃料が周囲の構造物と混ざり冷えて固まったものです。1号機から3号機までの原子炉や外側の格納容器の下部には、あわせて880トンの燃料デブリがたまっていると推定されています。

この記事では、各号機の最新の調査状況と、燃料デブリの取り出し計画について分かりやすく解説します。

廃炉作業の状況|廃炉プロジェクト|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

1号機

1号機では、2022年2月からのロボットによる格納容器内部の調査で堆積物の塊が映像などで確認され、東京電力は、この一部が燃料デブリである可能性があると発表しました。

また、2022年5月には、格納容器の底部で、原子炉を支える鉄筋コンクリート製の「ペデスタル」という構造物が壊れ、鉄筋がむき出しになっている状況が映像で確認されました。

1号機の格納容器内部調査 – 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

ことし1月からは堆積物のサンプリング調査が行われ、国や東京電力は、1年ほどかけて元素の種類などを分析するほか、堆積物の広がりを3Dで再現するなどして、内部の状況を詳しく把握することを目指すとしています。

燃料デブリ取り出しの状況 – 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

2号機

2号機は、原子炉建屋が水素爆発を起こした1号機や3号機と比べ、調査を妨げる構造物が比較的少なかったため、3つの号機の中で最も内部調査が進んでいます。

このうち2018年に行われた調査では、格納容器の底の付近で燃料デブリと見られる厚さ40センチから70センチほどの小石状の堆積物があることが確認され、堆積物の硬さなどの調査も行われました。

2号機の格納容器内部調査 – 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

現在、試験的な取り出し開始に向けた準備が進められています。

国や東京電力は最も内部調査が進んでいる2号機で、2022年内にイギリスで開発されたロボットアームを使い試験的な取り出しに着手する計画でしたが、改良や設計の見直しなどが必要になり、1年から1年半程度、延期することにしました。

これに伴い、早ければ2023年に2号機で燃料デブリの試験的な取り出しが始まる可能性があり、ロボットアームの先端に取り付けた金属製のブラシで堆積物をこすりとり、数グラム程度を採取する計画が示されています。

この作業が実現したあと、国と東京電力は、燃料デブリを取り出す量を段階的に増やすとしています。

燃料デブリ取り出しの状況 – 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

3号機

3号機は、2017年の格納容器の内部調査で、厚さ3メートルほどの燃料デブリとみられる堆積物が確認されました。

3号機の格納容器内部調査 – 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

その多くが水中にあると見られていて、燃料デブリの取り出し方法については、原子炉建屋を巨大な構造物で覆い内部を水で満たして取り出すなど、複数の案が検討されている段階で今後、10年程度かけて取り出し開始を目指すとしています。

燃料デブリ取り出しの状況 – 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

4号機

事故当時、定期検査中だった4号機は原子炉に核燃料はなかったものの使用済み燃料プールに1535体の核燃料が入っていました

事故のあと電源が失われ燃料プールの冷却ができなくなった上、原子炉建屋が3号機から流れ込んだ水素の影響で水素爆発を起こして壊れました。

燃料プールの水がなくなり、使用済み燃料などの冷却ができなくなると燃料が溶け出すおそれがあるため東京電力や国は燃料プールへの注水への対応に追われました。

その後、東京電力などは代替の冷却装置などでプールへ注水するとともに、2013年11月から使用済み燃料プールからの燃料の取り出しを始め、1年余りあとの2014年12月に取り出しを終えました

4号機燃料取り出し – 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)

まとめ

福島第一原発の廃炉作業は、最大の難関とされる「燃料デブリ」の取り出しに向けて進められています。

各号機では内部調査やサンプリング調査などが行われており、2号機では2023年に試験的な取り出しが始まる可能性があります。

廃炉作業は長期的かつ困難な作業ですが、事故の原因と教訓を忘れずに進めていくことが重要です。

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